おじさんが見せてくれたお魚、大きさは前の世界のよりすっごくおっきいし色も灰色なんだけど、お顔とかひれの形とかがどう見てもウナギなんだよね。
って事はさ、泥臭いのとか脂でぶよぶよしてるってのも何とかなるかも?
僕が前の世界で見てたオヒルナンデスヨって番組はね。あっつい季節になるとかならずウナギの事をやってたんだよね。
その時にさ、ウナギ屋さんの人が川で獲って来たばっかりのウナギはそのまんまだと泥臭いから、何日かの間ざるの中にきれいなお水をかけながら置いとくと美味しくなるって言ってたんだ。
「あっ、でも井戸からお水をずっと汲みっぱなしにすると、魔道リキッドがいっぱいいるからこの方法じゃダメか」
でもね、その方法はお金がかかりすぎちゃうからできないんだよね。
ならもう一個の方法でやるしかないかなぁ?
「おじさん。そのお魚、泥臭く無くなる方法があるよ」
「ん? 泥臭く無くなる方法? そんなものがあるのかい?」
「うん。あのね、そのお魚を網の中に入れて、川の中の泥が全然ないとこに何日か入れとくんだ。そしたら泥臭いの、無くなるんだって」
これもオヒルナンデスヨでやってたんだけど、ウナギを育ててるとこがね、コンクリートっていう石みたいなので作った池に川の水を流して、そのなかにウナギを入れてたんだよ。
そうするとね流れてるきれいなお水のおかげで、ウナギが泥臭く無くなっちゃうんだってさ。
「ああ、その方法なら知っているぞ。沼や池で獲った魚を皮の中のいけすに入れて置くと泥臭さが抜けるんだ」
「知ってたの? じゃあ、なんでやんないのさ」
「そんな手間をかけると、どうしても値段をあげないといけなくなるからだよ」
そういえばおじさん、このお魚はおっきくて簡単に獲れるから安いんだよって言ってたっけ。
確かに獲ってから何日か置いとかないとダメって事になると、今みたいに安く作れなくなっちゃうね。
「手間をかけて泥臭さが無くなっても、この魚が美味しくないのは変わらないからなぁ。それなら今のままの方がいいんだよ」
「このお魚、そんなにおいしくないの?」
「ああ。よく焼いても脂が多すぎてぬめってするからな。まぁ、それがいいって人もいるから人の好みなんだろうが」
おじさんがそういってるのを聞いて思い出したんだけど、そういえばウナギって蒸した後にもういっぺん焼くんだっけ。
普通のお魚は焼くか蒸すかするだけでお料理になるのに、ウナギはこの二つともやんなきゃダメって事は、きっとそのまんまだと美味しくないって事なのかも?
「だからこいつは、こんな風に串焼きにするのが一番なんだよ」
そんなお魚だから、おじさんはただ焼いてたれをかけるだけのこの方法が一番いいって思ってるんだって。
でもね、僕はウナギとおんなじやり方でお料理したら、絶対に美味しくなるのになぁって思ったんだ。
だからおじさんにお願いしたんだ。
「おじさん。そのお魚、買ってってもいい?」
「このクレイイールをか? それは構わないが」
「あっ、でも一匹のまんまだとおっきすぎて僕持てないから、その半分くらい」
死んじゃってるのだと泥臭さを抜くのは無理かもしれないけど、おじさんの言ってる脂が多すぎるってのは何とかできそうでしょ?
だから僕、おじさんにお願いして焼いてないクレイイールを半分だけ売ってもらう事にしたんだ。
「半分か。それなら比較的脂の少ないしっぱの方がいいな」
おじさんはそう言うとクレイイールをおっきなナイフで半分に切って、そのしっぽの方をおっきな葉っぱにくるんでから持ちやすいようにひもで縛ってくれたんだ。
「ありがとう! おじさん、これいくら?」
「ああ、別にお代はいい。そいつは元々、売れ行きが思った以上に良かった時の為に獲ったやつなんだが、今日の状況だと串に刺したやつでさえ売れ残って捨てなきゃダメっぽいからな。持って帰ってくれるのならありがたいくらいなんだよ」
「そうなの? じゃあもらってくね」
「おう! だがそんなもの持って帰って、お母さんに返して来いって言われても、もう受け取らないからな」
おじさんはそう言うとね、ニカッて笑いながら僕にクレイイールを渡してくれたんだ。
もうちょっとイーノックカウの探検をするつもりだったけど、お魚をもらっちゃったでしょ?
こんなの持って歩けないから、僕は探検をやめてお家に帰る事にしたんだ。
「カテリナさん、お料理手伝ってくれるかなぁ?」
でもね、ここで一つ問題が。
このお魚の下処理はできるけど、僕、ひとりで火を使っちゃダメってお母さんに言われてるでしょ?
だからこのお魚をお料理する時は、誰かに手伝ってもらわないとダメなんだよね。
「まっいっか。もしダメだったら、お家に帰ってお母さんに手伝ってもらえばいいもんね」
もしカテリナさんが忙しくっても、僕、ジャンプの魔法でグランリルのお家に帰れるもん。
その時はお母さんに手伝ってもらおうって思いながら、僕はイーノックカウのお家に帰ったんだ。
そしたらさ、
「あれ? 今日は街を探検するって聞いていたんだが、違ったのかい?」
お料理するお部屋にノートンさんがいたもんだから、僕、びっくりしたんだ。
「ノートンさん、なんでいるの?」
「この調理場が稼働できるようになったから、最終確認をして欲しいとストールさんに頼まれたんだよ」
ノートンさんって、ロルフさんちで料理長をやってるでしょ?
こういう調理場ってさ、ちゃんとできてるように見えても、使ってみたらちょっとおかしいなぁってとこが出てくることがあるそうなんだ。
だから料理人さんたちが働く前に、ノートンさんみたいな他のとこで料理長をやってる人にどっかおかしなとこが無いか見てもらった方がいいんだってさ。
「そっか。あのね、僕、お店で変なお魚もらったから、お料理してみようって思ったんだ」
僕はそう言うとね、おじさんにもらったお魚をノートンさんに見せてあげたんだ。
「変な魚って、クレイイールか。これはまた、癖のあるものを持ってきたな」
「ノートンさん、このお魚、知ってるの?」
「ああ。一度食べた事があるが、正直もう一度食べたいとは思わなかったな」
ノートンさんはね、イーノックカウの近くで獲れるお魚はみんな一度は食べた事があるんだって。
その中でもこのお魚はどうやって食べてもおいしくなかったから、僕が持ってきたのを見てびっくりしたみたいなんだよね。
「確かに珍しい魚ではあるだろうが、身はぐずぐずな上に泥くさく、その上骨が多くて食べづらい。どうやってもおいしくはならないと思うぞ?」
「でもね、僕、やってみたいお料理の仕方があるんだ。ノートンさん、手伝ってよ」
僕がお願いするとね、ノートンさんは困ったよう青顔で頭をかきながら、
「まぁ、実際にやってみないと納得できないか」
そう言って手伝ってくれることになったんだ。
感想でも頂いたのですが、ウナギは夏になるとお昼の情報番組で必ず取り上げられるんですよね。
なので天然ウナギの泥抜きはいろいろな方法がテレビで取り上げられていますし、中にはお酒の中に数日間生きたまま入れて置くなんて変わったものまで紹介されているのを見た事があります。
だから当然オヒルナンデスヨでも取り上げられていたので、ルディーン君は泥抜きの方法をいくつか知っていました。
そして当然その捌き方や調理法も取り上げられていたわけで。
という訳で次回、ノートンさんがものすごくびっくりする事にw